「ふたって、どこですか?」年収1,800万円の監査役が、情シスの35分を溶かした夜

ノートPCの裏に貼られた一枚のシールをめぐる一本の電話が、会社の評価制度そのものを揺らしている。
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その日、社内ヘルプデスクの担当者が受けたのは、同じ人物からの四件目の電話だった。まだ、午後になったばかりだ。

相手は会社の財務監査担当者。控えめに言っても、パソコンをまるで扱えない人物である。切り分けの手順を聞き取ることができず、こちらがリモートで操作させてもらう許可を取るだけで、毎回十五分が消える。

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端末に入るたび、担当者は見たくないものを見る。同僚や管理職から届いた怒りのメールだ。もうその話を蒸し返さないでくれ、と書いてある。PDFのコメントが消えたという彼の大騒ぎ。原因は、似た名前の同じ書類を十五個も作ったことだった。

そもそも彼に「問題」があった試しがない。必要なソフトを開いていないか、部署の業務アプリに必要なVPNにつないでいないか。だいたいそのどちらかだ。

この日は、ノートPCの調子が悪いという。何が起きているのか本人も説明できない。だが困っているらしい。

ところが、端末が特定できなかった。チームの誰一人として機体名も資産番号も記録しておらず、社内IDにもひもづいていない。資産管理と受付のシステムにも登録がない。彼がどうやってそのノートPCを入手したのか、誰も知らない。それでも、手元にはある。

そこで担当者は、シリアル番号を読んでほしいと頼む。文字が小さすぎて読めない、と彼は答える。写真を撮ってもらおうにも、持っているのは折りたたみ式の携帯電話で、その操作すら怪しい。

次の手はシンプルだった。ノートPCの「ふた」に貼られたシールの資産番号を読んでください——ただそれだけ。

そこから、壮絶な捜索が始まる。「ふた」という言葉が、彼の脳内でどうしても像を結ばない。ふたって、どこですか。彼はそれを繰り返す。

担当者はあらゆる言い方を試した。ふた、と呼ぶ。画面の裏側を見てください、と言う。ノートPCを閉じて、上の面のシールを読んでください、とも言う。すべて通じなかった。

気づけば、通話は三十五分。実作業は一つも進んでいない。担当者は翌日オフィスに来るよう伝え、現地対応チームに引き渡した。

この人物は今も週に五回から十回、電話をかけてくる。多くの場合、解決すべき問題はない。ただ画面をクリックして、相手が心を読んでくれることを期待している。年収は十二万ドル。日本円にしておよそ千八百万円だ。

後日談がある。現地対応チームはチケットを突き返し、しかも上司たちをCCに入れてきた。担当者はその全員に通話の録音を聞かせた。チケットは即座に、現地対応チームへ戻された。

この話が広く読まれると、反応はきれいに二つに割れた。

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最も多くの支持を集めたコメントはこうだ。「あの人は、パソコンのことを何も知らなくていいと決めたんだ。覚える必要がない。電話をかければ、あなたたちがやってくれるから」

別のコメントはもっと厳しい。「彼はいつ監査をしているのか。千八百万円分の仕事が、まとまりのない電話と会社の機材を壊すことだとしたら」。そもそもどうやって職に就いたのか、と書いた人もいた。

ある人は、彼は寂しくて人生に刺激がほしいだけだと切り捨てた。二〇二六年にこんな人が給料をもらっているとは信じられない、と。

外部監査そのものへの不信も噴き出した。あるコメントは、自社のコード管理を監査人に危険信号として扱われた体験を語る。政府機関として方針が変わるたびに修正し、変更内容も日付も理由も記録していたのに、だ。「だから私は外部のコンサルタントを信用しない」

無線の世界では「ふた」が下手な操作者を指す隠語だという指摘もあり、この記事の見出しは偶然にしては出来すぎている、と受け止められた。

一方で、矛先を会社に向けるべきだという反論も強かった。

最も実務的な意見はこうだ。すべての依頼に細部まで記録を残せ。何を頼み、相手が何を指し、こちらが何を説明したか。そして上司に送り、この利用者への対応に助けが必要だと伝えろ。上司が動かないなら人事に、IT研修の対象にできないか相談しろ。ただし必ず「この人を助けたい」という書き方で——非難に見えた瞬間、こちらが執念深く見えるから。

別のコメントは、覚えられない人が現実に存在することを前提にしていないシステムと教育こそが問題だと指摘する。何度も見ていれば、ここを押せばつながる、と覚えそうなものなのに、と。

報酬への怒りも出た。「学位も技術知識もある自分の年収は四万ドル。業界を間違えた」。誰かが提案した最も現実的な一手はこれだ。CFOに、あの録音を聞かせてみればいい。

ふたに貼られた一枚のシールが見つからないだけの話が、結局のところ「誰も止めない会社」の話になっていく。

この一本の電話と、そして同じ職場という箱の中でまったく逆の型で人を追い詰める「聡明すぎる上司」の話を、番組のホスト二人が本気で言い合います。

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